核シェルターは地震に強いのか!?真偽判定します!

2023年8月25日

当協会のYouTubeチャンネルに「核シェルターは地震に強い!?」の真偽判定動画をアップしました。それに伴い、核シェルターは地震に強いのかのお話です。

核シェルターは地震に強いのか?当協会に寄せられる質問の中で最近特に多いのがこの質問です。震度7で地上の建物が崩れても大丈夫なのか?地下なので地震があった時に押しつぶされそうで怖い。コンクリートにクラックが入るのでは?などなど。そこで今回は核シェルターは地震に強いのか否かお答えします。

3行まとめ

  • そもそも地下室は地震に強い。
  • 核シェルターは爆風圧による荷重も計算に入れので、建築基準法以上の強固な構造。
  • 当協会の基準にそって造れば、核シェルターは地震に強い。

そもそも地下施設は地震に強い!

まず大前提です。

当協会が「核シェルター」と呼んでいるのは「地下に分厚い鉄筋コンクリートの特殊建築物」です。しかも、当協会はスイスの基準を参考にしていますので、スイスの民間防衛仕様にそって造られた核シェルターを当協会では「核シェルター」と呼んでいます。

では、核シェルターは地震に強いのでしょうか?そもそも地下施設は地震に強いという調査結果があります。国土交通省都市・地域整備局による「地下街耐震に関する調査報告書」(平成22年3月)です。

https://www.mlit.go.jp/common/001021695.pdf(「地下街耐震に関する調査報告書」国土交通省)

この報告書は1995年1月に発生した阪神淡路大震災による地下街の被害状況を調査したものです。神戸市内には「さんちか」「メトロこうべ」「デュオこうべ」という3つの地下街がありますが、このうち三宮の「さんちか」は震度7以上の分布域に位置しているため、特に大きな地震動を受けた、と報告書には記載されています。

しかし、構造物の被害自体は部分的なひび割れが生じた程度の軽微な被害しか発生しませんでした。床の一部に帯状に15㎝の起伏が出た箇所がありますが、これは阪神電車の地下軌道の北端にあたり、異なる構造体同士の揺れの違いにともなう影響とのことです。地下街に接続するビルは大半が倒壊ないしは層破壊を起こしていましたが、これらのビルとのジョイント部分6か所すべては破壊されていました。

内装では天井板や金具などの落下が起こりましたが、構造自体の大きな損傷はありません。震度7以上の分布域ですので、地上の建造物は倒壊や破壊されています。注目してほしいのは、この「さんちか」は1965年に建てられた建築物であり、耐震基準は旧耐震です。

耐震基準は1981年に改められましたが、旧耐震は「震度5程度の中規模な地震で大きな損傷を受けないこと」であり、新耐震は「中地震では軽微なひび割れ程度の損傷にとどめ、震度6程度の大きな地震で建物の倒壊や損傷を受けないこと」とされています。報告書からは、旧耐震であっても地下施設は地震に強いということが読み取れます。

国土交通省都市・地域整備局街路交通施設課「地下街耐震に関する調査報告書」(平成22年3月)

国土交通省都市・地域整備局街路交通施設課「地下街耐震に関する調査報告書」(平成22年3月)

核シェルターは爆風圧も加味して構造を計算する

さて、当協会で参照しているスイスの核シェルターの基準は爆風圧を考慮した構造としています。建築基準法では「自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のもの」を建てるようになっています。ここでいう風圧には爆風圧は含まれていませんので、この風圧が爆風圧になります。

スイスの核シェルターでは爆風圧を1バールと定めています(重要施設は耐3バール)。1バールとは100kPa(キロパスカル)、㎡あたり100kN(キロニュートン)の過圧に耐えられるような構造としています。そのため非常に強固な構造となります。

たとえば、コンクリートの厚さは最小寸法が300㎜と決まっており、要件によって450㎜になったり、650㎜になるなど、増量することになります。上階(1階以上)が木造の場合、核シェルターの天井のコンクリートは650㎜にします。要するに、柱みたいな分厚いコンクリートで防護していることになります。もちろん、通常の配筋量よりもピッチが狭く非常に多いので、通常の鉄筋コンクリートの床・壁・天井とは異なる構造になります。

ちなみに1バールの過圧を風速に変換すると約405mとなります。猛烈な台風が風速54mですので、その過圧レベルの高さ、恐ろしさはおわかりいただけるでしょう。「風」が付いているので勘違いされがちですが、一般的に想像するような「風」ではございません。

さて、核シェルターはこのような過圧に耐えられる強固な構造ですので、地下施設という元々地震に強い構造に加えて、より地震に強い構造になると考えてください。さらに、地上階が木造で火災が起こったとしても、温度や時間で変わりますが、劣化するコンクリートはおおよそ100~150㎜程度です。先ほど上階が木造の場合は天井のコンクリート厚は650㎜と記しましたが、シェルター内部まで影響はありません。

核シェルターモデルルーム

当協会の核シェルターモデルルーム。分厚いコンクリートの箱となっている。

瓦礫で脱出できなくなるのでは?

さて、地震に強い構造というのはおわかりいただけたと思いますが、地震に関連してよく聞かれるのが「上の建物が崩壊した時に脱出できるの?」という質問です。核シェルターには特殊なレイアウトがいくつもあります。そのひとつが非常用脱出口です。

非常用脱出口とは文字どおり、非常時に脱出するための出口になります。たとえば、上階が崩壊して瓦礫が堆積したり、燃焼した柱が転がって入口から出られなくなった場合に逃げ出す非常口という位置付けになります。

核シェルター 非常用脱出口
核シェルター 脱出用タラップ

当協会の核シェルターモデルルームに設けられた非常用脱出口。

非常用脱出口には安全原則というものがあり、「崩壊瓦礫堆積範囲外に設けること」「火災の影響を受けない場所に設けること」という2つの原則にそって設けられます。核シェルターの建設では、基本的に地上の建築物は崩壊することを前提に考えます。そのため、上階が崩壊してしまっても逃げ出すことができるように、非常用脱出口を設ける必要があるのです。

上記の当協会モデルルームの非常用脱出口の写真はその一例ですが、スイスではトンネルを掘ってトンネルの先に避難口を設けるなど、土地や上階の状態により、ケースバイケースで設計します。

※当協会のモデルルームの詳細は下記の動画をご覧ください。

核シェルターモデルルーム動画

核シェルター 模式図

当協会のモデルルームの模式図。

クラックや剥落をより防ぐには?

核シェルターが地震に強い構造であることはおわかりいただけたと思いますが、日本の湿潤な気候により、クラックが入るなど、経年劣化の問題も生じます。また、小さな地震が良く発生するので、小さな地震が繰り返されることによるクラックの発生の可能性もあります。

核シェルター自体は一般的なコンクリートで建設するのですが、最近はひび割れを低減するコンクリートや高耐久性をうたうコンクリートも出てきています。クラックを防ぐために、このようなコンクリートを使用すると良いでしょう。

防水性能を向上させたコンクリートや爆裂に強いコンクリートも出てきているので、コンクリートをセレクトすることによって、より強固な核シェルターを造ることも可能です。さらに、より強固な構造にすることを目論むのであれば、ペンタゴンの外壁や戦車に塗布されている、ポリウレア素材のLINE-Xもあります。

日本ではトンネルや地下鉄の剥落防止で使用されるケースが多いのですが、もともとは防爆や耐衝突を目的に開発されていますので、核シェルターには最適です。防水性能もあります。ちなみに、当協会では非常用脱出口の地上に接している部分への塗布をお薦めしております。

【結論】当協会の基準にそって建設すれば、核シェルターは地震に強い!

さて、整理しますと、

  • 地下室・地下施設はもともと地震に強い。
  • 核シェルターは爆風圧も加味して建設する。
  • 爆風圧が加わるのでより強固な構造となる。
  • 上の建物が崩壊しても非常用脱出口から逃げられる。
  • クラックを防ぐには高耐久性コンクリートを使う。
  • より強固にする場合は、ペンタゴンの外壁で使われているポリウレアのLINE-Xを塗布する。

となります。

当協会の核シェルター建設の基準に則って設計・建設すれば、核シェルターは地震に強いと言えます。核シェルターは、核攻撃や通常兵器などの攻撃だけでなく、防災シェルターにもなる強固な建築物であると認識しておいてください。

日本核シェルター協会
事務局

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